強引ではないけど、甘えるのが上手だと思う。
こんなイケメンにちょっと首を傾げられて頼まれて、断れる強者を私は知らない。
「じゃあ、仕事の話をするけど今会議中でね、副社長がすぐ来れないかもしれない。社長は今朝出張先に向かったし」
「問題ないです。もし質問があれば君の婚約者を呼ぶので」
にっこり微笑んだ後、胸ポケットから眼鏡を取り出す。
途端に仕事モードに切り替わったキースの姿に、私も頷き説明を始めた。
仕事モードになったキースからはピリピリとした迫力と緊張感が伝わってくる。
仕事中でも私の下の名前を呼ぶ巧とは大違いだ。
頭の回転が速いので、会話も早いしドンドン質問してくる。
私も息が詰まる様な緊張感にプレッシャーが圧し掛かってきたが、手ごたえを感じた瞬間のあの快感を知っているので徹底的に隙のないプレゼンが出来たはずだ。
硬かったキースの顔が段々と軟化して行くのが分かるほどに。
うちの会社との取引日より早く来日したのは、他の会社とのセッティングではないく、もしかしたら好きな人と早く会いたかったのかな?
それとも、巧に会ってみたかったから?
両方かもしれない。仕事では油断できない大会社のキースを私も完璧に作った笑顔で観察するのであった。



