何の話なのか分からなかった。
私の知っているキースはいつも笑顔で、優しくて、そして博識で会話が途切れないような人。
なのに今の話し方は、明らかに巧を挑発していた。
婚約者だと勘違いしているままなのだとしたら、婚約者がいるのに森元さんに優しくしている巧が優柔不断に見えたのかもしれない。
「あのね、キース。私と巧は、婚約者じゃ」
「俺と志野は信頼しあってるから、揺らがないだけだ」
何故か巧も挑発的な棘のある言葉で、優しく笑っている。
……この二人、相性が悪いのかもしれない。
「こんな会社の前で立ち話続けるよりは、さっさと中に入りましょうよ。キース、案内するね」
キースの腕を強引に掴むと、彼は目を大きく見開いた。
「あ。ごめん。慣れ慣らしかった?」
「いえ。ちょっと驚いただけです。隙がないような完璧な人だから」



