私の言葉に、いちいちびくついているのが気に入らない。
私は正しいことを言っているのであって、苛めているわけではないのに。

「あのね、貴方は栄子おばあさまのコネで入ったのよ。くれぐれも栄子おばあさまの信頼を裏切ることだけはしないで頂戴」
「おい、朝から何やってんだ」
ぴしゃりと私が言ってのけた瞬間、柔らかい笑顔を貼りつけて巧が現れた。
「あら、室長。おはようございます」
「志野。ばあさんの預かり物だからもう少し優しくしてやってくれよ」
私の言葉がショックだったのか、青ざめて固まっている新人にため息が出る。
どうしてこんな、しっかりしてない、芯のないような普通の子に優しくしないといけないんだろう。こんな子、人の何十倍も努力しないとこの会社に相応しくないから厳しいぐらいが丁度いいのに。

「まずは簡単な仕事から慣らしていくんだ。プレッシャーを与えないように」
「分かってるけど、優しくしすぎて能力がないままなら秘書室には必要ないからね」

顔も平凡、生まれも平凡、学歴も平凡。おまけに英語は堪能ではない。
頭の回転も早くない。
そんな子がよくもまあ私の勤める会社に入れたものだ。

「お前の物差しで測るなよ。良いから、仕事に戻れ」