それは猫を二匹、三匹被ってるからだ。
今だってタクシーの運転手に微笑みかけて、懐柔させているようにさえ見える。

「逆にお前は猫は無理でもハムスターぐらいは被った方がいいんじゃないか?」

「ハムスター?」

「がっちがちに武装してても、針は簡単に隙間を貫くから」

足を組もうとして、無駄に長い脚はタクシー内では狭かったのか逆にロボットの様にぎこちなくなった。全然決まらないポーズで、私の心配をしてるのかな。
「それはどうも。でも私は隙なんて見せないもの。ご安心を」
「お前を見ていて安心できたことは無い」
「酷い!」

大人の様な甘い駆け引きも無い、子どもの様な他愛のない喧嘩みたいなじゃれあい。

私達の関係は数センチも進まないまま、この曖昧な関係で過ぎて行くように思えた。