辞令を受ける前に私たちは社長にある新企画チームの配属をお願いされた。

それが4か月前。
キースたちの会社と提携するに当たり、日本側にもキースたちのショッピングモールを建設したい。そのために向こう側からも此方側からも数人交換することになった。
移動するのは海外事業部の人たち。
そしてそのチームのリーダーに巧をと言われた。副社長も携わることになるようだ。
海外へ行きたい気持ちは変わらないらしい。
つまりこのビッグ企画を数年後に無事に終わらせた暁には、本当に巧には副社長の地位が待っている。

『で、志野、お前も此方に来ればキース君との交渉がやりやすいが――』

『いいえ。私は秘書を続けます』

数年後に副社長になる巧の横に。完璧な私が居たい。

そう思ったので、私は移動しなかったが代わりに『社長第一秘書並びに秘書室長』の辞令が下りた。

数年の間は、森元さんの悪役として頑張らねばいけない。


「よし。休憩時間になったね。森元さんも私のは後でいいから、先に休憩して」

「わ、分かりました。あの、高永室長はご存じなんですか?」

「今から言ってくる」

そう言うと、危ないからと何故か巧の場所まで付き添われてしまった。

巧は最後の仕事と言わんばかりに、数カ月先までのスケジュールを社長と確認しているところだった。
荷物はとっくにチームの方へ移動が完了している。

「まだ仕事かかる?」