「え、は?」
「おめでとうございます。サインお願いします」
にっこりと配達業者さんが花束を見ながら笑う。
「え、え?」
「999本の薔薇の花ことばは、『あなただけ』『来世でも貴方を愛す』ですよ!」
興奮した森元さんの言葉と共に、受付二人が黄色い声を上げた。
「でもあと一本がありませんね」
「……あるわ。秘書室に。栄子おばあさまの育てた赤い薔薇が」
「じゃ、じゃあ、プロポーズで間違いないんですね!」
まだ出勤途中の社員だって居る中で、いつもとは違う注目のされ方に戸惑う。
震えながらサインして、花屋さんにお礼を言っても、問題はこの花をどうするかってことだ。
一人で抱えられる量ではないけれど、誰かに触って欲しくない。私が貰った花だから。
「ご、ごろごろ持ってきましょうか」
「台車ね。うん。貴方って偶には気が効くんだね」
思わず笑ってしまった私を見て、一瞬森元さんが立ち止る。
「何よ」
「や、照れてる英田秘書って可愛いですねって思って」
「は? 照れてないわよ。馬鹿じゃないの?」
「あは。ツンデレですか」
頭がお花畑の森元さんにさえからかわれて、悔しい。
が、目の前の問題にも向きあわなければいけない。
「悪いけど、高永室長を呼んでもらっていい?」
受付の二人にお願いすると、二人も真っ赤な顔になったまま頷いた。



