なんだろう。香水以外の匂いがする。
二人の挨拶に、爽やかな笑顔で対応しつつ私の方へ迷いなくやってきた。
「おはようございます。室長」
「ああ。おはよう。志野、この資料なんだけど目を通した後に社長と副社長にも見てもらってくれる?」
「え、ええ」
白い封筒に入った書類を渡される。
そのまま竜崎の方へ歩いて行く巧から、確かに普段とは違う、新緑の匂い。
濃い薔薇の香りが立ち込めた気がした。
「英田さん」
「はい」
「一階に英田さんに届けものが来てるらしくサインお願い致しますって」
「私のサイン?」
受付にわざわざ取りに行くって何だろう。
此方を振り向かない巧を気にしつつも、渋々一階へ向かった。
一階に到着すると、慌てて着替えて私の方へやってくる森元さんに見つかってしまって思わず露骨に嫌な顔をしてしまった。
「おはようございます! 英田秘書は二日酔い大丈夫でしたか?」
「当たり前でしょ。大勢の前で泣いたりわめいたり、恥ずかしいと思いなさい」
「えー、私、そんな事しました? 記憶にないですっ」
にこにこと笑う森元さんは、もしかして私と心が通い合ったと思って上機嫌なんだろうか。
それは仕事が出来てからにしてほしい。
「今日は庶務課で仕事終わらせて、明後日から秘書課で研修が始まるから」
「はい! 宜しくお願いします!」



