起きたら、家に居たのは二日酔いで頭を押さえている母だけだった。
真野は帰ってきてないし、とっくに社長も出勤したらしい。
「志野、栄子おばあさまの誕生日は両家で集まってお食事会をしましょうって言ってたわよ」
「はいはーい。誰が主催するんだろうね。早いうちに言いだしっぺが頼みに来ないと私も巧も動かないからね」
嘘だけど。
栄子おばあさまの誕生日会に私と巧が何もしないわけない。
「ねえ、あんたたちってー」
「おっと。プライベートは聞かないでお願い致します」
「ちょっと」
おっとりと尋問してきた母から逃げ出し、出勤する。
危なかった。普通の会話の中で色々と詮索してくるのだから気をつけねば。
辞令の件やオーストラリアの件はまだ内緒だ。
流石にキースと私をタヌキ二人がくっつけようとしていたのがばれたら、母はこわいから父はぎちぎちに締めあげられるはず。
だけど、今はまだ、そのタイミングではないはずだから。
いつも通る駅までの道なのに、昨日巧に手を繋いで、抱きしめられた場所をバスで通り抜ける瞬間、胸が甘く締めつけられた。
こんなことぐらいでいちいちドキドキしていたら、森元さんの悪役として情けない。
誰も知らないだろう。もしかしたら森元さんよりも経験ないのかもしれない。
けれどこの気持ちは経験やそこらでカバーできる者とは思えない。



