悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?


「……」

辞令に娘だからって情けをかけて来ないといいけど。
それは私が怒るからしないだろう。
でもどうするんだろう。私がオーストラリア行ったら、結婚のタイミングは帰ってから?

それって何年も先だよね。
そうなったら遅すぎる。

でも、二人で考えていかないといけない問題なんだ。

「失礼ですが、高永室長は本当に英田秘書が好きなのですか?」

秘書室をノックしようと手を振りかけた瞬間に、少しだけ開いた隙間から声が聞こえてきた。

そのまま入っていこうか悩んでいた。こんな言葉では躊躇することはない。


「庶務課の人たちが言ってました。高永室長は優しいから、社長派と副社長派の二つに分かれている会社を立て直すために、英田秘書と婚約してるって!」
「面白いね。俺が会社の為に自分を犠牲に? 俺と志野が結婚したら派閥争いが無くなるって?」

にこにこと笑っている巧の顔があきらかに目が怖い。全く笑っていない。

「はい。高永室長は優しいし、頭も良いので、きっとそうだろうって。でも、無理しないでほしい。自分には正直で居て欲しい」

「正直に、ねえ」

クスクス笑った後、巧はスッと貼りつけていた笑顔を取り払った。

「正直に言えば、会社だの派閥だのどうでもいいし、考えてない、かな」

「え?」