「あーあ。森元さんみたいに頑張り屋の子が次期社長と結婚とかって絶対素敵よね」
「ねー、夢見ちゃう」
「実際、室長って森元さんのことどうなんだろね」
「指導の時、優しいし良い雰囲気だったよ」
給湯室へ行けば、社員達の噂話なんて聞きたく無くても聞こえてしまう。
書士社員達は自分達の洗っていたお弁当箱を片付けているらしく、なかなか出てくる雰囲気でもない。給湯室は五人も入ったら窮屈だから、あまりあの空間に入りたくない。
あと数分待って出て来なかったら、彼女達にキースの珈琲を頼もう。
「で、森元さんはどこにいったの?」
「ああ、室長に頼まれてた印刷資料、代わりに渡しに行かせたの」
「わー、やるじゃん。遅いけど何してるんだろうね」
ニヤニヤするその言葉達に吐き気がした。
森元さんは、ただ彼女達の馬鹿みたいな夢物語のせいで転がされているだけ。
彼女の気持ちも夢物語の材料でしかない。
滑稽で哀れだとさえ思えた。
壁をノックしてから出口付近に仁王立ちしたら、おしゃべりに花を咲かせていた彼女達が私を見て固まった。
「ねえ、終わらないならキースの珈琲頼んでいいかな?」



