「……何かあったのか?」

「まあね。森元さんをけなし過ぎたせいか恨みを買ったのかもね。仕事に影響を出すならとことん追求して許さないけど」

じろりと私が視線を送ったのは、皆に褒められている森元さんの方だった。

主に研修指導してくれている庶務課の社員達に囲まれて褒められていた。

「すげーな。あの花園代表、いっつも怖い顔で全く笑わないんだよ」

「花園さんは優しい方ですよ。ハーブとか、あと苺を育てるのがとても上手で」

「でもお手柄だよ。あの英田秘書が居ない時に、森元さんが颯爽と花園さんに話しかけてカバーする姿、格好良かった!」

「あんな大物に自然体で接するなんて凄いよね」

ちやほや褒められて、顔が破綻している森元さんを見て不快になる。
あれが素直な表現なのか。
確か、巧のことを好きだと私に言ってきた時も、おどおどしていたけれど真っ直ぐだった。巧が欲しいとストレートに表現していた。


あれが本能に正直に生きて、夏休みは長いから焦らないでも良いかと夏休み最終日に泣きながら宿題をする子だ。それでいて、今みたいに周りからきっと応援してもらえて、手伝ってもらえるような、子だ。

「森元さん」
巧の横で紙コップの珈琲を持ったまま、私も声をかけた。