「じゃあ二人とは久しぶりですし私が話します。なんなら二度目のランチにしちゃおうかしら」
「お供します」

「ふふ。助かるわ。でも貴方はキース君の方へカバーしなきゃいけないかもしれないわよ」

代わりに立花さんが栄子おばあさまの横に寄り添って歩きだす。

もし今、栄子おばあさまが此処に居なかったら、険悪にはならないながらも森元さんの一人勝ちになっていたはずだ。

この計画を企てたのは、頭がそんなに切れるはずがない森元さん一人では不可能だ。

「英田さん」

立花さんに控え目に急かされたので、一応秘書室へ回ってきた連絡履歴を確認しつつ、巧の方へ援護に向かった。

花園代表と三条代表は栄子おばあさまの登場に驚きつつも大変喜ばれ、そのまま社長も含め四人で食事に行かれた。

それだけでも肩の荷が下りたけれど、いざ巧の援護に向かえば全く焦りもせずに完璧に接待している巧の姿に力が抜けるのが分かった。

一階のロビーで社長たちを見送った後、大きく溜息を吐いた。

「散々な一日だったね」
「二人一度に相手にするのには骨が折れる相手だよな」

紙コップの珈琲を差し出され、ふっと給湯室の女子社員たちの言動が頭に浮かんだ。

「どいつもこいつも、仕事中に公私混同しやがって」