私の不機嫌そうな雰囲気に、一瞬無言になった。
嫌そうに眉を顰めてるのが安易に想像できた。

「早くしないと、社長と副社長の策略に嵌りそう。やたらとキースと二人っきりにしてくるんだけど」
『なるほどな。やっぱりか』

電話の向こう側でクールな様子を崩さない巧に、思わず舌うちしてしまいそうになる。
「なんでそうクールなの。昨日は嫉妬してくれたくせに! 私が嫌だって言ってるんだから早く来て!」

「お、こっちから声がする。おい! こっちから庭に降りれるぞ!」

私が怒鳴ったと同時に、呂律が上手く回っていない怒鳴り声が聞こえてきた。

『おい、志野?』

「切るね。早く来てよ」

つい感情的に怒鳴ってしまって悪かったと反省した。
目の前に、酔っ払った無能そうな取っ払い上司と、その上司を上手く諌めることもできない部下が現れてしまったんだから。

「おい、姉ちゃん、一人か? 一緒に散歩してやろうか?」
「す、すいません、すいません、ほら、課長その辺で」
「仕事中ですので、ご遠慮させていただきます」

なんで酔っ払いと、こんな素敵な庭を散歩しないといけないのか。