「私も日本で結婚式するなら、ぜひ袴を着てみたいですね」
「ああ、キース、日本に好きな女性が居るって言ってたからね。どう? 上手くいきそう?」

昨日は私と、今日はうちの会社とほぼ一日仕事なのだから、全然会えてなさそうなのが可哀相だけど、キースならばすぐに好きになってもらえると思う。

「うぉほんっ」
「副社長、わざとらしい咳ですがどうされました?」

すぐに駆けよって小さく耳打ちすると、副社長はキースを見た後にちらりと私を見た。

「邪魔なら先に席に戻ってようか?」
「はい?」
「大学時代の積もる話があるようだし、後は若いお二人で……」
「じゃあ、私が帰っていいんですね? 今日は勿論、お仕事ですよね? 余計なお節介じゃないですよね? 仕事じゃないならさっさと家に帰って眠りたいんですけど?」

にっこり笑顔で首を傾げて尋ねた。
社長の顔からは、図星ですと言いたげに汗がたらりと落ちる。

空港まで巧が社長を迎えに行く、ね。
それまで場を持たせる、か。
社長と副社長は一体私とキースに何を期待してるんだろう。

「キース、今日はとても美味しい天ぷらを用意してるの。もう入りましょう」
「ちょ、志野さ」