「室長に言われて嬉しかったこととか」
「うーん」

何を言われたかっけ。
プライベードになると、奴は口が悪く、それでいて朝が弱いから面倒を見てやったりするけど、確かに甘い雰囲気はない。
この前の、ピリピリするような空気の中、唇だけ甘かったあの時だけ。
一瞬巧の気持ちが見え隠れして、動揺はしたけど。

「難しい」
「え、悩む様な事ですかね!?」

驚かれてしまったけれど、だって本当だ。

「なんか、意外です。英田さんなら恋愛でも自己主張してそうなのに」
「それ。こう自信持って言える答えがあるような、でも理由が明確じゃない様な」
「恋愛まで真面目なんですね」

クスクスと笑われ、ちょっとむずがゆい。
会議とかで、ミスがあっても巧ならば切り抜けられる。
あの安心感は好きだけど。
その気持ちを上手く纏められない自分が嫌いだ。