「ああ、面倒なことになった。社長もタウンゼント氏たちとの食事にやはり同席したいらしい。空港で合流して、食事に向かう車内で今日の契約の流れ等説明してくる」
「なんでも首突っ込んでくるの本当に止めてほしい。席の用意は連絡しとくから」

「ああ、頼む。まだ一波乱ありそうだ」

苦笑している巧だが、内心社長のことをくそじじいと思ってるのが伝わってくる。
帰ったら愚痴ぐらい聞いてやろうと素直に思えた。
ただ昨日の今日で、きっと巧は私の家で二人きりになるのを避けると思う。

あの後ろ姿を見ると、頼りになるし安心する。

けれど私の心に情熱的な気持ちが沸かないのも真実だった。

「なんでだろう。お互い熟しすぎたのかな」
「お二人が結婚されない理由ですか?」
「そんな感じ」

甘さがない、硬くなって美味しくなくなったフルーツみたい。
見た目は他のスイーツと変わらないのに。

「決定的な何かか、燃え上がる情熱的な何かが欲しいんじゃないですか?」

「何かって?」

「それは、今までの恋愛から思いだして見てくださいよ。何が嬉しかったとかときめいたとか」
その恋愛経験がないのだから分からないのに。