「……暁のバカ」
「お前は大馬鹿野郎だ」
無地の白いTシャツに袖を通すと、暁は睨みつけた。
「あいつは、もう居ないんだってば」
言葉を選ぶ瞬間、暁の顔が一文字一文字声を放つたびに苦しそうだったのが印象的で、私は目が離せなかった。
苦しそうな顔も、王子様みたいに整っているんだね。
「颯太はいるよ。隣の家で、いつもサッカー部の練習にへとへとになりながら帰ってきてる。お昼はパン二つかオニギリ。見た目チャラそうだし、怖いけど、部活中は皆を引っ張るムードメーカー。女の子たちはそんな颯太を遠目でしか見れないけど、――私は隣にいれる」
「お前の中の颯太は王子様かよ」
「外見は、暁の方が王子様だよね」
色素の薄い髪を揺らした暁を、私は作られた童話の王子様の様に見つめた。
「大馬鹿野郎」



