空をまた、飛行機雲が割っていく。
けれど今日は割れ目が塞がれないので、きっと明日は雨が降るのだろう。
何しにきたのか分からないまま、早退した。
先生は追いかけてきたけれど、日頃、にこにこと笑って受け流していた内向的な私が、一歩も譲らなかったので諦めてくれたようだ。
別に受け流していたのは、そうしなきゃ颯太との時間を邪魔されるからだよ。
「……」
昨日のキスの後から颯太を見ていない。
自転車の音や、朝練の声、食べ散らかしたパンの袋。
そんな、爪痕みたいな、居た痕跡しか見えなくなった。
バスが私の横を通り過ぎても、私は歩いて病院へ向かった。
この町で一番大きな病院だとすれば、丘の上にある古いお城の様な不気味なあそこだろう。
あそこには過去に私も一週間だけ入院していた。
ちょうどあの病院目掛けて飛行機は空を割る。
地球の中心にいるような、土や空の匂いがする病院。
小学六年生の颯太の最後の試合で、始発に乗った時に起きたスリップ事故。
あの時のけが人は、私だけだった。
両足のお皿を割ってしまって半年車いすだったので覚えている。



