逃げてはダメだよ。
分かっている。分かってた。
でも花びらのじゅうたんの上は、暖かいし気持ちが良いし。
傷つかないで眠れたから。
それ以上は優菜も何も言わなかったし、私も机の上の震えるシャーペンを見るしか出来なかった。
数分、お互い居心地の悪くない沈黙を守っていたら、がやがやと男子三人が入ってきた。
野球部の男子たちだった。
坊主頭の彼らは、優菜を見るや否や集まってきた。
「おはよー。部活おつかれー」
「おー。いっつも早いよな。何してんの?」
「すげー。それ、高そう」
「課題見せて」
「あ、トランペットには触らないで。ってか提出物、三人ともいつも遅いからね」
三人は、綺麗な優菜に明らかな好意を寄せているのに、優菜は楽器を磨くの手一杯の様子だ。
暁が王子みたいなルックスだと騒いでいたし、アイドルグループのライブまで行くぐらいイケメン好きだから、野球部の男の子たちは眼中にないらしい。



