「あいつには、全部やらねえよ」

颯太の熱い吐息が花を掠めた。

近づいた颯太の顔を私も目を見開き、逸らすことも止めることもできないまま。

――颯太の唇に触れた。

空がキラキラと漫画の様に輝いていて、作られた嘘みたいな世界で、私は颯太にキスされていた。

それが私の願いだったから。

私が暁じゃなく、颯太だけが私を理解してくれると信じて疑わなかったから。

冷たい手、冷たい唇、――熱い鼓動。


全て、私が望んだ願望。

ちろりと涙が一つ零れると、そのまま颯太の姿は消えた。

まるで風に攫われたかのように、颯太は消えて、私一人が取り残された。

世界の全てが、颯太は偽りだったと拒絶した。