「……俺もあいつも、お前が大切っていう根本的なものは変わってねえよ。ってか、6年間俺達の距離が変わらなかったほうがおかしいんじゃねえかな」

「おかしくないよ。颯太は同じ気持ちでいてくれたんだよね?」

縋るように見上げたら、颯太は困ったように嘆息した。


「そうだよ。俺はお前の理想が作り上げた『俺』だよ」

「ふふ。優しい」

「ブスのくせに調子に乗るなよ」

そう言いつつも、颯太は急に立ち止り、部活の練習で汚れた手を見つめた。

「颯太?」

「それでも俺は、あいつが羨ましい。あいつは6年で変わったから。きっとこれからも」

「颯太?」

「俺はお前の中で、――こうやって生き続けるんだけどな」


不意に、颯太の汚れた手が私の頬に伸びた。
ものすごく冷たい手で、驚いた私に、颯太の顔が近づく。