「新学期なんてそんなもんだよ。今までの生活が高校の生活に変わるんだ。仕方ねえよ。俺だって一年だから走ってばっかだし」
「何よ、突然」
「リズムが狂って、きつそうに見えたから。あんま無理に変わらなくて良いじゃん。どうせ、いつか――嫌でも変わらないといけねぇし」
「優菜と颯太は、いつか仲良くなれる?」
「それは残念ながら無理だろうけど」
苦笑した颯太は、校庭まで振りかえらずに走りだした。
校庭を見下ろせる三階の音楽室からブラスバンドの音が聴こえてきていた。
それでも私は振りかえらずに、とぼとぼと歩きだす。
帰り道、バスに二回も追い越されたけれど、気にするのは止めた。