「綺麗……」

「そうでしょう? うちの馬鹿どもは気づきもしないだろうけど、百花ちゃんならそう言ってくれると思ったわ」

「綺麗で……なんだか夢みたい」

花びらが左右に揺れて、奥の景色を隠していく。
見えやしない。
隠されて、時折片鱗に触れてしまう。

「暁と颯太が何も会話しないし、見つけたら逃げちゃうし。……私の知っている二人がなんだか二人じゃなくなっちゃった」

寂しい。
悲しい。
そんな簡単な言葉ではない。
心のよりどころが無くなって、心がぽっかり空いてしまった感じ。


「暁はね、百花ちゃんがそうやって傷つくと分かってたけど、覚悟して此処にやってきたの」
壁に寄せていた段ボールからガサガサとおばさんは黒くて古いメトロモームを取り出す。

「あの二人を許してね。百花ちゃんが大切だから、それぞれ形は違えど傍に居たいのよ」