最後の夜、引っ越しの段ボールが廊下に並んでいるのを見て私が号泣して、段ボールをなぎ倒す事件が起きた。
二階に閉じ込められ、一階ではうちの親とおばさんたちとお兄ちゃんが荷物をチャックしたり梱包し直してたりしていた。
「お前、いい加減迷惑かけるなって」
「そうそう。もう諦めとけよ。すぐ帰ってくるし」
それでも泣きやまない私に、颯太は暁のランドセルの中から『じゆうのーと』を取り出して適当に開いたページに文字を書きなぐった。
ぐちゃぐちゃの汚い字で、颯太は『俺たちはずっと一緒だろ』と書いた。
すぐ横でぽろぽろと泣く私の頭をそのノートでポンと叩く。
暁は、そのノートを奪うと、自分の鞄に入れた。
「じゃあ、頂戴。これ、俺が貰うから」
「は、ずりぃ。大体お前が転校なんかするから、百花が泣いているんだぞ!」
「俺の方が泣きたいのに百花が泣くから泣けないんだ。二人の傍から離れるのは俺の方だろ?」
「百花、お前も泣いてねえで何か言えよ! この皮肉野郎を黙らせろ」
「百花、俺が居なくなったら颯太を頼むな。テストとかテストとか、あとテストとか」
「……う」
私の言葉に二人は注目する。
何を言うのか、待っていてくれた二人が私の顔を覗きこんだ。
「うわぁぁぁん! 離れたくないよぅぅぅぅ!」
大声で子どもの様に泣く私に、二人が顔を見合わせてため息を吐くのが分かった。



