『ごめんね、暁とおばさん、手術の為に転校することになったの』
小学生4年の夏休み前だった。
夏休み前なのに蝉が五月蠅くて、颯太と蝉取り網で捕まえもせずに追いかけて笑いながら、擦りガラスの玄関を開けて、玄関で爆笑していた時だった。
お兄ちゃんの影響で私たちは立派な悪ガキに成長していた。
そんな私達を、冷めた目の暁と涙ぐむおばさんがリビングから顔を出して手招きした。
そして転校を聞かされたのだった。
「暁と離れるなんて嫌だよ。ねえ、いつまで転校するの?」
「分からないの。でも発作が起こってもこの町の病院では処置ができないかもしれないと」
「そんな……」
暁は赤ちゃんの頃にも心臓の手術をしていると言っていた。
だから、最近発作で良く休むから心配していたのに。
「颯太は?」
「俺は行かねえよ。かあさんも暁の世話でいっぱいだろうし」
「でも、家族がバラバラになるなんてダメだよ!」
「……大丈夫って思わせてくれたのは、百花ちゃんよ」
おばさんの目は、真っ赤なうさぎみたいだったけれど、もう行くのだと決意していたのが分かった。
「まあ、仕方ねえよ。俺も迷惑かけれないしさ。正直、手術で身体がよくなるなら早くしたい。脱ぎ棄てたいぐらい、この弱っちい身体が嫌いだから」
暁の気持ちももう決まっていて、私だけが最後まで泣いていたと思う。



