おばさんが弾いていた曲に興味を持って、優菜達に話したことならある。
元々クラスに女子は14人しかいなくて、全員で押しかけて聴かせてもらったことならある。
お母さんには、いきなり行って失礼だと散々怒られたけれど、私がおばさんにピアノを習ったのはあの日からだったのかもしれない。
確かにおばさんは良く笑っていた。
「お前がいつまでも颯太を思うのは自由だけど、お前を待ってる奴らはいっぱいいるんだよ。颯太だけがお前の世界の中心じゃなかったはずだ」
「……でもお兄ちゃん」
車の中の匂いを閉じ込めたタオルを胸の前でぎゅっと掴んで、私は目を閉じた。
「颯太だけが、この世界に居ないなんておかしいよ」
皆が成長してるのに、颯太だけ小学生のまま時間が止まるなんて嫌だ。
「……だから、お前には見えるのか? 高校生の姿の颯太が」
私は頷く。
「私以外、きっと夢を見てるんじゃないの。つまらない夢を。バカみたい」
そう言いながら涙が込み上げてきた。



