逃げても逃げても、メトロノームみたいにまた引き戻される。
過去に逃げ、未来を進む暁に逃げ、私の思いは行ったり来たり。
颯太が居る未来は無く、暁の望む未来に私は行きたくなく。
振り戻されては、暁を振り回す。
とうとうコテンと扱けてしまった時には、靴も片方なかった。
鞄も病室へ置いてきた。
扱けた時に鼻を擦りむいたので、私の鼻は高い。
そんな支離滅裂な思考の中、震える自分の肩を抱きしめた。
「颯太……っ」
颯太が居ないことを、誰も私に言わなかった。
優菜もうちの親も、おじさんおばさんも。
誰も私を起こさなかった。



