世界は愛で満ちている





ービンゴ。

うぃいーん、とあたかも今まで鍵に抑えられていたように蓋が開いた。

そこには。



「っえ」



ガンホルダーと一丁の銃、そして小型のナイフが7本。


突然場違いなけたたましくがちゃがちゃとして音楽が流れる。

蓋の裏にテレビが内蔵されていたらしい。



『はーい!高城(たかしろ)蒼波さん!やーっと見てくれましたねえ!』



ケタケタケタ、と薄気味悪い元々は人型であったであろう人形が笑う。


この声、どこかで聞いたことあるな。



『僕は“僕”!こんにちは!蒼波さん!このウイルスね、治療方法が見つかってません!残念でしたー!』


さらっと言いのけた“僕”とは対照的に
え、と脚の力が抜け、腰が砕けた。


映像を見るために首を上げる気力すら削がれてしまった。




あ、わたし、死ぬのか。




唐突な死の予告に自殺は怖くなかったくせに二分の恐怖と八分の動揺で心が支配される。



へたりこむ私に“僕”は続けた。


『でもねー…なんか?シュミレーターでは7日間でウイルスが死ぬらしくて!良かったねー!で、さあー、その間ねー、僕たち死にたくないしーそんな気味の悪いウイルス外界に持ってこられても困るからー』


ずいっ、と“僕”はカメラに近づいた。


『勝手に生きてね?』

「ひっ」


ただでさえ薄気味悪い顔にさらにあざとさと偽善を顔に貼り付けて。

そう、この人形、動いた。

生きてる?訳はないよね。

気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。



『ちなみにねー、ちょーっと蒼波ちゃんだけ特典ついてるからあのほら、双子のむっつりくんにみせるといいよ』



“僕”が画面右下を指差した
建物の地図のようなものがある。
ところどころ印が付いていた。


「な、んでわたしだけ?」

『んー、なんでだろうねー?そこまでは教えてあげなーい。自分で考えなねー』


ばいばいねー、とどこかのアニメで見たような手の振り方をしながら“僕”は画面からいなくなった。