ドアの方から、声がした。
びっくりして振り向くと、そこにはついさっきまでいた、あのひとが。
「...せがみ先生。」
壁に身を寄りかからせ、腕組みをしながら麻尋の方を見ている、瀬上陽人...先生。
「ピアノ、いつも弾いてるの?」
おもしろそうに、顔をパアッと輝かせていう。
麻尋は、見えないように小さくため息をつくと。
「はい、放課後は。」
“ふぅーん” と、瀬上。
突然はっとしたように、麻尋に近寄ってくる。
「えっ... ?」
「そうだ!ピアノ弾けるんだったら、合唱コンクールで伴奏もできるね!」
「.....は?」

