花火は顔を洗うからと流しに向った
タカは先に教室へ戻った
上機嫌で廊下を歩いているとウロウロとしている女の人がいるのに気づいて近づいた
「どうも
どこの教室に行きたいんですか?」
そう聞くと女の人は
「私、野村涼子と申します
息子の教室に行きたいのに迷っちゃって
ほかの生徒さんに名前を名乗ると逃げられちゃって…
なんでかしら?」
そう言われて花火はピクッと眉を動かした
あくまでも冷静に
そう自分に言い聞かせながら笑顔で
「えっと、私は真坪花火と申します
お言葉ですが
あなた、有名ですから…
皆にちょっと避けられてしまったのでは…
とか思うんですけど、
思い当たる節はありますか?」
そう聞くと涼子は悩んでから首を横に勢いよく振った
「ないわ
私、テレビも新聞も見ないから
あ、でも旦那が捕まった時は沢山電話が鳴ってたわ~
迷惑よね?
あれ」
そう淡々と話す涼子を見て花火はだんだん引きつった笑顔で
「涼子さんは、何も思ってらっしゃらないのですか?」
そう聞くと涼子は笑いながら
「やーね
何で私が何か思わないといけないの?
私が放火したわけじゃないし
だいたい、もう謝る人なんていないんだし
2年も経ってるし〜
あんなの忘れちゃえばいいのに」
そう言われて花火は何かを喋るより早く行動していた…