花火の頭の中では葛藤が繰り広げられていた



優子の申し出はありがたい



けれど、もしも復讐をするのであれば
祖父母にも優子にもタカにもタカの父親にも迷惑がかかってしまう

けど、だからといって引き下がれるような話でもない
復讐は何が何でもやりたいとずっと思っていたことだから



「………少し……
考えさせてください……」



そう言うと優子は微笑んで頷いた



タカはその場を離れる花火を追いかけた



人気のない場所まで行くと花火はタカに振り返り小さな声で



「……どうしたら…
いいんだろう???」



そう聞いた

タカは花火の頭を撫でながら真っ直ぐ前を向いたまま



「花火の好きな方を選べばいい…
俺が花火のしたい事にどうこう言える立場じゃない…」



そう言うと花火はタカの服を掴んで下を向いたまま



「皆に…迷惑になっちゃうの
タカの家に行くと…
迷惑をかけちゃう人が増えるの…
でも…

なんで迷ってるのか、自分でも分かんないの
毎日ちゃんと緑のお見舞いに行って、
ちゃんと野村が憎いのが分かるのに…
もう、何が正しいのかは、
分かんない……」



タカは花火を見て苦しそうな顔で花火の顔を自分の胸に押し当てながら



「花火に復讐は無理だ……
花火は根が優しいから…
どんなに憎くても、きっと花火には真守を消す事は出来ない…

出来ても花火が壊れちゃう…
きっと、橋川緑さんだってそんな事望んでない…
俺さ、お前しかいとこいないんだ…
兄弟もいない…


親は共働きなんだよ
だから、家に1人でいる事が多かった…
寂しい気持ちなら分かるんだ
俺達は似たもの同士だから……
1人で家に居るのが怖いくせに家で待っちまう…

もう、1人で待つな…
俺と一緒に緑さんを待とう?」



そう言い終わると花火は声を上げて泣いていた



ただ、誰にも気づかれないように
泣いていた…