やべぇ、飲み過ぎた・・・・。

 
本能に起こされるように、二日酔いで重くなった頭を抱えながら目に入り込もうとする朝日を手で遮る。


「つーか、昨日の記憶ねぇ・・・。」


むしろ記憶どころか服、さらにはパンツすらない。
代わりにあるのは馴染まないベッドと知らない後姿の女。

そう何度もあったことではないが、この程度ではもう驚かない。

「パンツ、パンツーっと。てか、いま何時だ?」

意外と筋肉質な情けない格好で、おもむろにスマホの電源を点けようとするが、画面は僕を映したままだ。

「っち、バッテリー切れてやがる。つーか、マジ今何時なんだ?学校遅れちまう。」

自分の衣服を見つけ、装備を整えながら時計を探す。が、見つからない。

 仕方なしにテレビを点けると・・・



10時15分



「や、やべぇ!!完全に遅刻やん!いや、まだだ。ここから15分で行ける距離なら・・・」

 未だベッドで横になっている女の身体を揺する。


「あのさ、悪いんだけど、ここ何区?俺学校行かなきゃやべぇんだけど?」


「んー?昨日のことおぼえてないのー?」

甘ったるいしゃべり方と匂いに若干の苛立ちを感じたが、容姿は悪くない。


くそ、何で俺なんも覚えてないんだ?
・・・じゃなくて。

「あ、あぁ。ごめんな。とりあえず今日の講義出ないと、俺マジ単位危ないんだわ。
一年目で留年確定とかゴメンだからさ」


視線を彼女の胸元に持っていかれそうになるのを必死で堪えながら、行動に移せる心構えをする。

「えーっと、ザンネン。ここ東区だからヒロキの大学まで30分はかかるよー?」
可愛げに舌をぺろっと出す。


遅刻確定!


その瞬間、裕樹は凍り付き膝を付く。

「ま、まじかよ。ってか俺すすきので飲んでなかったっけか?」

「えー?意気投合したから私の家で飲んでたんじゃん。もしかしておぼえてないのー?」

後ろから腕と胸を絡み付けて、さらに甘い声と匂いを裕樹に吹きかける。

「うん、俺最近飲むと記憶なくなるんだわ。悪いな、昨日のこと覚えてないんだわ。とりあえず午後の講義には間に合うと思うから俺、行くわ。」


彼女を振り払うように立ち上がる。


しかし彼女はそれに合わせて裕樹の前に立つ。

「えー?昨日あんなにすごかったのにおぼえてないんだぁ?
わたしヒロキをもっとほしいぁ」

次の瞬間口に柔らかい湿った何かが入り込んできた。


「ねぇ?良いっしょ?1回くらいサボったってダイジョウブだって?


・・・わたしガマンできないよ?」


彼女は一回動きを止める。


数秒の葛藤の後、



「だよな。実は俺もムラムラしてたんだわ。今日はおやすみー」


彼女を押し倒す形になり。結局その日は。

いや、その日も大学に行かなかった。