目覚める度に左腕の傷が痛む。今は薄くなりつつある白色の線。
その線が僕とあの日のボクとの境界線である。
・・・いや、そうであってほしい。
 
 高校生の時に彼女の後を追おうとした。

 だがそんな勇気もなく、わずかばかりの出血と金属による痛みと、自分の弱さを感じるだけで終わってしまった。

 そう、僕はただの臆病者。

 だがそれと同時に偽り。「演技」を覚えた。
 いつ、どこで誰にでも、どんな時でも笑う笑顔。
 悲劇のヒーローになりきりどんな女の母性をくすぐる。

 そうこの日からボクは恋愛というものを捨てた。

 生まれ変わった高浪 裕樹(たかなみ ひろき)の人生が始まったのだ。