ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?


木陰を出て、日差しの中にもう一度出てみる。暑いなぁ。もうすぐ十月なのに。私はまだ一応夏休みだからこのほうがいいけど。


「誕生日、行きたいところある? 」

「高校生じゃないからもう休みじゃないよ」

「うちの会社は都内だから十月一日は休日にしたんだよ。大学さぼれよ」


やっぱり変な会社。都民とか関係ないはずなのに。


「守が毎年いちごケーキ食べたがるから、うちに来る?」

「いいよ」


面白そうに答えてから、シゲが病院の庭にある時計を見上げた。


「もう帰ろうぜ」


そう言うと、返事も聞かずにもう歩き出す。迷わず走り寄って、後ろからその手を取った。横を向いて私を見てくれた目が、ふわりと微笑む。そろそろ見慣れて来た優しい表情。


そんな大人な顔をしたくせに、「暑くて倒れそう、アイス食いたい」と子どもじみたことをすぐ言う。

どっちなのかほんと、よくわかんない。でもたぶん、私たちは今こんな感じがいい。


「何食べるの? 当たり狙いに行く?」

「アイスぐらい変えてもいいだろ。だいたい嘘だったくせに。古瀬を一途に思ってますアピールしやがって。わけわかんないんだよ」

「急になんの話? 意味わかんない」

「ああ、でもそうか。俺ってことか。じゃあ結衣はまた同じのでいいな」


また一人で勝手に考えているらしいけど、ご機嫌そうだからまあいいか。




手をつないだまま振り向いて、少し遠くなった病室の窓を見上げた。


またね、春ちゃん。


またすぐ会えるよね。




シゲも一瞬止まって振り返ってから、つなぎ直した手を力強く握ってくれる。


二人で待ってる。


だから、シゲと帰るね。



THE END