「だって、あれは、絵を描きにいくんだって」
「誕生日に遊びに行こうって誘ってんだから、わかるだろ普通」
「誕生日だからって一回も言われてない。それに行かなかったくせに。いなくなったくせに」
そう指摘すると、シゲは何も言えなくなった。嘘だもんそんなの。今更そんなの。
「真央ちゃんには連絡してた」
「してない。向こう行った時に携帯も解約したし、誰とも連絡とってない」
「だって色々知ってるみたいだった」
「隣のおばちゃん経由だよ」
どうしたらいいかわからなくて、黙ったままにらむような形になってる。なんで今更。そんなの信じていいかわからないし、知りたいのは今のことなのに。
でも、そうか。嘘つくなって自分で言ったから?
「嘘はダメなんでしょ」
「ごめん」
「偉そうに私に色々言ったくせに」
「……だから、バレてると思ってたんだよ」
とぼそっと言いながらも、そのままシゲは赤くなって黙り込む。一人で大人になっちゃって、かっこよくなっちゃったふりして。
「気まずくなるの嫌だったんだよ。別に付き合わなくても、あの時はあのままでよかった」
目をそらしたままで嫌そうにつぶやいている。かっこ悪い告白だ。


