静岡へは、新幹線は使わず急行に乗って行く。それほど混んでいなくてボックス席を三人で使えた。
座ったとたんにシゲが尚人くんに声をかけている。
「尚人、あれ見せて」
「こんなとこでも仕事? 働きすぎだろ」
笑って言いながらも、尚人くんはもうタブレットPCを出してる。仕事って言ってるけど、これは二人で遊んでるようなものなんだろう。
シゲが受け取って隣の私にも見せる。昨日の渡り鳥の尚人くん版だ。もっとすっきりしたシルエットで、群れをなし一つの方角を目指して夜空を飛ぶ。
「ちょっときれいすぎるかなぁ」と感想を述べると、シゲが「言っただろ」と尚人くんに向かって偉そうに言って画面を切り替えた。
「あ、こっちの方がいい」
整いすぎていた鳥たちのバランスが、少しランダムになって本物らしい。シゲが先に指摘してたってことか。
それから壁の絵と並べた状態でも見せてもらう。そうすると、うーん、どうだろう、なんかバランス悪いな。鳥がごちゃごちゃとしてて多すぎるかな。
「ここで行き詰まってるわけ、俺たちとしては。悪くないんだけど、うるさいだろ」
「間にもう一枚挟んだらどうかな。雪の絵」
一羽しかいないバージョンを間に挟んだら、うまく整いそうだ。


