借りたお金はすぐに返さなきゃと思いつつ、外に出る気にはなれないほどの暑さ。やっぱり午後遅く、夏の日差しがゆるくなる頃にやっと出かけた。


会社なら、五時台にはまだいるよね。それに住んでるって行ってたから、社員寮が裏にあったりするんだろう。



朝来た会社の前で自転車を降りて、立ち止まる。


会社というけど、うちよりは大きい町工場に見える。前に広めの駐車場があるし、間口も広くて引き戸を開けたらトラックが入れそう。しかも隣のマンションと同じくらいの奥に深い敷地だから、町工場にしては大きめかな。


社員が十人以上いるかもしれない。お土産足りるかな。


さっきの人達はこういう機械系というよりむしろ美術系の雰囲気がしたけど、作業着じゃなかったからかな。作る人じゃなくて設計担当?



いろいろ考えながら端にある白いドアをノックするけど、反応はなかった。


そっと開けて「こんにちは」と中を覗く。




きっと大きな機械でも置いてあるんだろうと思っていたそこは、予想外の世界だった。


四方の壁を大きな鉄の柱に支えられ、天井が二階分ぐらいまであり、緑色の床は使い込まれてつるつるとしている。でも工場らしいのはそこだけで。


広い間口以上に深く広がるワンフロアは、オフィスとして使われているようだった。


右側に並んだパソコン机。会議ができそうな大きなテーブルとホワイトボードがあり、左側には応接セットの奥にキャビネット。

後ろに衝立があって奥は見えないけど、奥が工場になっているとも思えない。