お互いにすれ違ってたんだろう、あの頃。もしかすると今も。


こないだは誰よりも君を理解しているように思えた東城くんも、自分のこととなると全くダメなんだね。




僕も少し後押ししないといけないかな。


「結衣は今も東城くんが好きだと思うよ。僕には言わないけど」

「古瀬にそんなこと言われる筋合いない」

「あ、ごめん」

「いちいち謝る必要もない」


そんな態度もかっこいいなぁ、と思っているのがばれないように気を引き締めた。




彼は「中学の時のことだ」と割り切ってくれているけれど、もちろん僕は、怒られていても彼の視界に入り名前を呼ばれるだけで今も震えるほど嬉しい。


あの瞬間さえ、彼に「言えよ」とすごまれた恐怖の中で、自分が彼を激昂させていることにどこか感動していたのかもしれない。


本当に僕はこんな奴で、ごめんね結衣。これだけは君にも言えない、僕だけの秘密にしておくよ。