「じゃあ、失礼します」
そう挨拶して振り返ると、彼氏さんが後ろのガードレールに寄りかかって待っていてくれた。朝からジャージでお使いについてくる彼氏なんていないと思う。
「これで終わり?」
頷くと、彼はまた大股で歩き始め、来た道を今度はゆっくりめに戻っていく。
「あの、静岡の人ですか?」
「え?」
「さっき、バカって言ったでしょ。静岡の友達がよくそう言うから、方言なのかと思って」
なんか反応ない。まずかったかな。 方言とかいうのは東京人の思い上がりだと言われたことがある。
「いくつ? 年」
「もうすぐ十九になるとこです」
「じゃあ一緒。だもんで敬語使わなくていいけど。自転車、いつも蹴っ飛ばしてるの? 歪むよ、ああいうの」
「えーと、ああいう大物は初めて蹴ったかな」
「派手にやったなと思ったのに、振り返ったらかわいかったからびっくりした」
「時々言われる、凶暴だって」
「凶暴?」
何かまじまじと見られた。いえ、そんなめちゃくちゃに暴れるとかではないんだけど。


