ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?

後ろから二、三分自転車を押していった先の路地に、古い自転車屋さんがあった。まだ閉まっている。


「ここに置いといて、後で来る?」

「あの、山田精機って会社に急いでこれ届けなくちゃいけないんです。場所がわかんなくなっちゃって」


人に頼るのは苦手だけど、そんなこと言ってる場合じゃない。


「スマホで地図見ればわかると思うんですけど」

「持ってないの?」

「電池切れてて。財布もなくて」

「それでパンクもして?」


自分でもバカバカしい情けなさだけど、お使いはなんとかやり遂げたくて、まじめに「はい」と頷く。


「バカえらいなぁ」


小声で笑った。バカえらい?あれ、それってもしかして方言だよね、静岡の。


そう思って見ると、静岡出身の春ちゃんになんとなく似てる気もする、この人。のんびりした口調に、しかもたぶん天然のくるくる頭。


一気に好感度が上がって、助けてくれそうな気がしてきた。


「住所わかる?」


慌てて答えると、即検索してくれた。覚えようと思って一生懸命見てたら、パッと画面が遠のいた。


待って、まだ覚えてない!