足りないなんて嘘だし、綾さんには動揺がばれてるだろうけどしかたない。ちょっとさすがにあの場にいるのは無理。
シゲと真央さんは思った通りに親密だった。小さくてかわいくて元気で、私とは全然違うタイプの人。ずっと会ってないなんて距離を感じさせない。幼馴染で年上だからにしても、シゲは彼女にやけに優しい。
「あー、最悪」
呟いて、歩道に落ちていた石を蹴っ飛ばした。
「暴れんなよ」
後ろから声がして、シゲが追い付いてきた。「俺も買い物」と言いながらスーパーまでの道を一緒に歩く。
「ごめんな、真央が。つけてたとか気味悪いよな」
真央さんのフォローのために来たのか。シゲに謝られる筋合いなんかない。
「気味悪がってたのは純だから別にいいよ。ママの差し金とは思わなかったけど、純はすごく期待されてるからね。ママにもパパにも」
特に期待されてない私の寂しさなんかより、ずっと重たい荷物を背負っている。資格を取って、堅実な女の人と結婚して、事務所を継いでほしいと思われている。どれも純はちっとも求めていないのに。
「どうせ俺とは違うよな」
「どうせって?」
何言ってんだろうと横を向いたら「なんでもない」と顔を背けられた。


