「あー、えーっと。ちょっと大山高に後輩がいて、なんか話を聞いたことが」

「真央。嘘つきたいならもうちょっとうまくやれば」


どう見てもごまかしていますという彼女の泳いだ目としどろもどろな口調に、シゲが呆れたように言う。


でも「もうちょっとうまくやれば」か。私には「白い嘘でも汚い」だったのに、優しいな。


「純の知り合いですか?」

「知り合いっていうか……古瀬くんのことは直接よく知らないんだけど、お母さん同士が仲良くて」


純のママと? よりによってそんな人がシゲのお隣と仲良しだなんて、そんな偶然あるの? 近所でもなんでもないのに。あ、会計士の奥さん同士でつながるのか。


「それだけでなんで結衣のことまで知ってるわけ?」


シゲが言うとおりだ。純をよく知らなくて私を知ってるなんておかしいけど、そういえば心あたりがなくもない。


まだ言おうかどうしようかと迷っている様子の真央さんに声をかける。


「もしかして、純をつけてたことありますか?」

「うん。あの、ごめんなさい……まさかシゲの」

「つけてたって何やってんの、真央」


言いかけた真央ちゃんの言葉にシゲが割り込む。シゲはそういうことも嫌いそうだ。