ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?


何をどう話せるか自分でもモヤモヤした気持ちで綾さんの書類チェックを引き受けていたその午後、入口のドアが勢いよく開いて、女の子が入ってきた。


「こんにちはー」


工場の天井によく響くはきはきした声。大学生くらいのかわいい子だけど、ここで見たことがない。でもためらいの全くない笑顔だ。


「真央」


ガタッと私の向かいの席でシゲが立ち上がったのを見て、女の子が走ってくる。


「シゲー!百年ぶりー!」


手を広げて走り寄って、そのままシゲの首に抱きついた。シゲはされるがままになった後でようやく彼女の肩を押し戻した。


「久しぶり。早いじゃん」


嬉しさを隠してはにかんだような笑顔でシゲが言う。


「今ついたとこ!遊ぶはずだった友達が急に都合悪くなっちゃって。飛行機の予約取り直すのが意外と大変でね」

「とりあえずうるさいから裏回って」


そのまま話しだしそうな彼女をシゲが冷静に止める。確かにうるさいというか、みんな呆気にとられていた。


「隣のうちの子なんで、うるさくてすいません」


シゲはバツが悪そうにそれだけ言って、彼女を外に追い出した後、自分は社内のドアから裏のダイニングのほうに行った。