鳥を中心にしない他のアイデアも色々話し合うけど、なんとなくうまく行かなそうだった。
「今日無理に考えてもダメかもね。お互いひらめくまで待ってみようか」と石川さんは急かさないでいてくれた。
シゲは「同じような絵にしなくてもいいし、無理に作るぐらいならやらないほうがマシかも」とやる気があるのかどうかわからない微妙なコメントをしている。
「ところでこの鳥ってなに? ハトじゃないよね?」
石川さんがスケッチを指差した。私の描いたのだと全然わからないだろうなぁ。
「結衣、わかって描いてる?」
自分も小さく鳥の絵を落書きしながらシゲが聞く。
「ユリカモメかと思ってたんだけど、頭は黒いんだっけ。ふつうのカモメ?」
「いや、サイズ的にはユリカモメ。冬は白いはず」
やっぱりシゲの絵のほうがうまい。鉛筆の動きを見てたら「お前とは練習量が違う」と心を読んだように笑われた。
「ユリカモメなんだ。どこかで見たの?」
「上野の不忍池にいるんですよ、いっぱい」
シゲが石川さんに答えた。そうだ、動物園の中からも外からも見えるあの池。懐かしいなぁ。


