早速打ち合わせになった。石川さんが言う「この子」はあの白い鳥だ。雪の中を白い鳥が飛んでいるイメージはどうかと言う。
私たちの自転車みたいな深い紺色にして、夏の海と冬の雪で対の絵にしたらってひらめいたんだそうだ。
「雪に見えますか? 夜空らしいですけどね、あれ」
シゲが面白そうに言って訂正する。私も星だと思っていたけど、そういえば雪に見えないこともない。
「ああそうなの? 夜空を飛んでるのもいいかな」
石川さんは気軽に答えてくれて、自分のアイデアにこだわらない様子だった。シゲがこの人とやりたいと言った気持ちがわかる。
合同制作は思いが強くないと支離滅裂になるんだけど、誰かひとりの想いが強すぎるのもうまく行かない。
もう少し話してみて、星が輝く大空を飛ぶのと、雪の積もる地面の上を飛ぶのと、両方スケッチブックに描いてみる。
シゲは無言。気に入ってない証拠だ。
「尚人くんにも来てもらった方が良かったかな」
「いや。それよりお前全然ぴんと来てないだろ」
図星だった。あの鳥が飛んでるってイメージはかなりこじつけだ。だってあんな風に羽も飛び散ってて、その後何事もなかったように飛んでるなんておかしい気がする。
石川さんも結衣ちゃんが思うように描いてみてよと言ってくれたけど、「案が浮かばない」と言い逃れた。ほんとは、雪の下に埋まってるんじゃないかと思う、あの鳥は。でもそれじゃ鳥の絵にならない。


