笑顔を持たない少女と涙を持たない少年



「あら依美、もう食べないの?」


母親は少し心配そうに、私に声をかける。


年に一度の誕生日。


目の前には好きなメニューと、好きな家族。


フォークが止まる理由なんて、ないはず、なくていいはずだ。


だけど。


「お腹いっぱい…」


何故かこれ以上口に運ぶことができない気がして、私の持っていたフォークはカチン、と小さな音を立てて食器の上に横になった。