笑顔を持たない少女と涙を持たない少年



夢なら覚めるなと、一瞬、思った。


ドアの前に来て、そっと手を触れる。


力を入れて、目を閉じた。


そう。


どうか、これが夢ではありませんように――


「エミ」


奏の声が、届く。


そして、その声は優しく笑って。


「誕生日、おめでとう」


それは、他の誰かに言われることのなかったはずの言葉。


心が、身体が、震えた気がした。