おかしいことなんて、何もないと。 そう言わんばかりに受け止めてくれた、目の前の彼の優しさが。 私は嬉しくて、無表情で喜んだ。 「…生まれつき、笑えなくて、嬉しくても、楽しくても、笑えなくて」 まだ、期待が胸に残っていた。 その期待を頼りに伝えてみようと、小さく一歩踏み出した気がした。 自分の中の言葉を、小さな音で繋げていく。 真っ直ぐに、奏を見て。 「だから、人と上手く、関われない」 暑さのせいか緊張のせいか分からない、汗が手の上で滲むのを感じる。