笑顔を持たない少女と涙を持たない少年



笑えないから、話しかける理由はなかったから。


だけど、今。


私は自分の中で、この人に話しかけたいと思って。


自分の意思で、この人に話しかけた。


そうだ。


私はきっと、この人なら分かってくれるかもしれないというわずかな期待に胸を弾ませているのだ。


ドアを開けてそこに広がっていた空間を、私はまだ信じられていないのかもしれない。


この空間を信じられていないからこそ、何も気にすることなく、話しかけることができたのかもしれない。


夢のようなこの空間だからこそ、口が動いたのかもしれない――


「私、笑えない」