笑顔を持たない少女と涙を持たない少年



でもそれを表現するのは、私にはまだ難しい。


「依美?」


フワッ――


窓からの風で、私の長い黒髪が揺れれば。


奏の瞳には、赤みを帯びた私の顔が映る。


何秒間か目が合って、時間が止まる。


「依美」


私を呼び教壇から降りて、私と同じくらいの背丈になった笑顔の奏。


伸びてくる手は、私の頭を優しく撫でて。


こっそり、初めてのキスをした――。